導入事例|段階的な白用

業務委託から取締役へ——「権限がなければ、現場は動かない」週3日の業務委託で入った元・生産技術部長が、3部長を経て取締役になるまで

現場改善の手応えはあった。それでも、業務委託の立場のままでは改善が前に進まなかった――。長野県の精密部品メーカーに週3日の業務委託で入ったSさんは、決裁権のなさという壁にぶつかります。この記事では、外部の一人が「中の人」になり、現場が動き出すまでの流れを、経営者の視点で追います。

人材
Sさん(60代)/元・自動車部品メーカー 生産技術部長(愛知)。北米駐在を経験。
受け入れ企業
長野県の精密部品メーカー(従業員 約100名)
関わり方
業務委託(週3日・現地に通う)
登用の経過
業務委託 → 製造・加工・品質の3部長 → 取締役

単発のコンサルティングでは、手応えが持てなかった

Sさんは自動車部品メーカーで生産技術一筋。北米駐在も経験し、最後は部長を務めたのち、定年を待たずに独立しました。独立後はスポットのコンサルティングを70件ほど手がけています。ただ、困りごとに単発で答える形では、自分の提案がうまくいったのかどうかも見えにくい。手応えの持てない状態が続いていたと言います。

もっと踏み込んで、成果が残るところまで関わりたい。そう考えていたときに紹介を受けたのが、長野県の精密部品メーカーでした。

まず現場に張り付き、3ヶ月かけて空気を変えた

「とにかく生産性を上げてほしい」という社長の依頼に対し、Sさんはいきなり設備投資やロボット導入に走りませんでした。まず現場に張り付き、週に一度みんなで集まって「自分はこう思うが、どう思うか」と問いかけ続けます。最初の3ヶ月は、ほとんど響かない日々でした。

ある日、現場の女性社員が前向きな意見を口にし始めます。空気が変わり始めた瞬間でした。「いけるかもしれない」——Sさんはそこで手応えをつかみます。

それでも、改善は前に進まなかった

ところが、業務委託の契約期間である5ヶ月が終わる頃、おかしなことが起きます。現場の皆が話を聞いてくれるようになったのに、肝心の改善が前に進まない。理由は明確でした。

結局、私はアドバイザーでしかない。決裁権も持っていないし、お金もない。まったく説得力がない。— Sさん

「権限がないと進まない」——そして取締役へ

改善案そのものは受け入れられていました。動かなかったのは、Sさんに決裁権と予算がなかったからです。どれだけ知見があっても、責任を取れる立場になければ、意思決定は前に進まない。この壁は、外部のアドバイザーという立場そのものに由来していました。

Sさんは社長に、率直にこう伝えます。「権限がないと進まない」。社長はこれを受け止め、Sさんは製造・加工・品質の3部長を引き受けました。そして現在は、経営にも踏み込むため取締役に就任しています。「いろいろなことにチャレンジしたい」という本人の希望も汲まれ、週3日勤務の取締役という柔軟な形での就任でした。

業務委託という軽い入口で相性と力量を見極め、双方が納得してから登用へ。外部の一人が「責任を取れる立場」になって、初めて現場が動き出しました。これは、コンサル会社などが間に立つ仲介型では構造上たどり着けない、企業と人材が直接契約する直接型ならではの道です。

受け入れ企業の声

人柄として信頼できる方で、ぜひ一緒にやってもらいたいという気持ちは、最初から変わりません。

とても積極的に動いてくれていて、自分が管轄する製造部門のメンバーとも面談し、関係づくりを進めてくれています。

正直なところ、これまで社内にいた部長よりも、話しやすい関係性ができていると感じています。

受け入れ企業の経営者(長野県・精密部品メーカー)

※ 上記は、経営者が打ち合わせで語った内容を、公開できる範囲で要旨としてまとめたものです(逐語引用ではありません)。プライバシーに配慮し、社名等は伏せています。

この事例が示すこと

  • 1

    改善は「知見」ではなく「立場」で動く。どれだけ的確な提案でも、決裁権と予算がなければ実行に移らない。責任を取れる立場を託して初めて、現場は動く。

  • 2

    登用は、試してから決められる。業務委託という軽い関わり方で相性と力量を見極め、双方が納得してから社員・役員に迎える。いきなり雇用を決めないぶん、採用の失敗リスクを抑えられる。

  • 3

    「中の人」になれるのは、直接契約だから。仲介型では契約は提供会社とのもので、その人を自社の幺部に迎えることは構造上できない。直接つながって初めて、外部の人が中の人になる道が開ける。

よくある質問

業務委託で来てもらった人を、本当に取締役にできるのですか?
できます。企業と人材が直接契約する直接型では、双方が合意すれば業務委託から社員・取締役への移行が可能です。実際に、自動車部品メーカーで生産技術部長を務めた方が、長野県の精密部品メーカーに業務委託(週3日)で入り、現場改善で手応えを得たのち、製造・加工・品質の3部長を経て取締役に就任した例があります。まず業務委託で相性と力量を見極めてから登用できるため、採用のミスマッチを抑えられます。
コンサルや顧問と、どう違うのですか?
顧問やコンサルは、助言や計画づくりが中心で、現場で手を動かすところまでは関わらないことが多いです。直接型で迎える現地出社型の人材は、現場に入って実務に即した課題解決まで一緒に行います。また、契約が企業と人材の直接契約のため中間マージンが乗らず、関係や成果を社内に残せる点も異なります。
なぜ「アドバイザーのまま」では現場が動かなかったのですか?
改善案そのものは現場に受け入れられていました。動かなかったのは、業務委託の立場に決裁権と予算がなかったためです。責任を取れる立場になって初めて意思決定が前に進み、改善が実行に移りました。知見よりも、責任を取る立場にあるかどうかが、改善の実行を左右します。
地方の会社ですが、来てくれる人はいるのでしょうか?
経験豊富な50〜60代のプロ人材の中には、地方企業の現場で経験を活かしたいと考える方が少なくありません。フルリモートではなく、現地に通う、あるいは常駐する働き方を前提とした人材を紹介する仕組みがあります。週3日の通いから、関わり方には幅があります。

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