再雇用で「あなたは主役じゃない」と言われた技術者が、60歳から5年かけて種をまき、65歳で新たな開発現場の中核に。茨城の自宅から千葉へ片道3時間。それでも「楽しくやれています」と語る、Kさんの物語です。
60歳で定年を迎え、再雇用制度で会社に残ったKさん。配られた心得には「自分は主役じゃない」とありました。現役をサポートする役に徹する日々に、プロジェクトを引っ張ることが好きだったKさんは「張り合いがない」と感じることも。「このまま65歳で社会との繋がりが切れるのは嫌だな」——その思いが、次の一歩へ目を向けさせました。
「60歳になった頃から、5年先を見据えて何か種を蒔いておこうと決めていました」。Kさんの“種まき”の一つは、JOINSに登録し、自分が貢献できそうな案件をじっくり吟味しながら、職務経歴書を充実させ、スカウトが届くのを待つことでした。焦って動くのではなく、時間をかけて準備を重ねる。その積み重ねが実を結び、65歳の満了を目前に、機械設計・制御という、長年培った技術が生きる案件との縁がつながります。
大手メーカーとは、使う設計ツール(CAD)もものづくりの進め方も違います。「最初の半年は、道具やシステムを理解するのに精一杯。正直、その期間はお金をもらうのが申し訳ないという気持ちもありました」。それでもKさんは、その数ヶ月を「助走期間」と割り切り、新しい環境に馴染むことに時間を使いました。
いまでは現場の人たちともスムーズに連携し、設計から制御まで任される存在に。水を使わないパレット自動清掃機という新製品開発の中核を担っています。週2日、自宅から片道3時間の通勤も「都心へ向かう人の流れにのると、社会の一員としての誇らしさを感じる」と前向き。「脇役」だった経験も、場所を変えれば「あなたにお願いしたい」と頼られる力に変わりました。
今までやってきた技術も活かせているので、楽しくやらせてもらってます。
Kさん(大手精密機器メーカー出身・65歳)
60歳からの「種まき」が実を結ぶ。5年先を見据えた準備が、65歳の縁につながった。
週2日・業務委託で、開発の中核に。移住もフルタイムも前提にしない関わり方。
「脇役」の経験も、場所を変えれば頼られる力に。