【事例】RPAは必要ない?たった3カ月で実行できた「業務自動化」の秘訣

長野県長野市にある経営コンサルティング会社、信光経営センターは、2020年5月~7月の3カ月間、東京都在住30代のシステムエンジニアの男性と契約しました。たった3カ月で、手作業で行っていた業務のうち「印刷業務」「給与計算業務」「税務申告業務」の3つを自動化できた背景を、三井和典社長に聞きました。

副業人材を募集したきっかけは何だったのでしょう?

日経新聞に掲載されていた副業の記事をみて、当社に今、必要なのはこれだ!とピンときて、すぐJOINSに問い合わせました。

信光経営センターは会計・税務業務を軸に、地元の医療福祉系事業者向けに資産運用、相続、新規創業支援サービスを展開しています。元々、経営コンサルティング事業を行うなかで、当社が取り組むべき課題はみえていたんです。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールを導入し、人が手作業でやっている事業プロセスの一部を自動化すること。これに経営資源を投下したいと思いつつ、なかなか機会を得られずにいました。

経営資源の投資に中々着手できなかった理由

①IT人材の採用が難しかった

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なかなか着手できなかった理由の1つに、IT人材の採用が難しかったということがあります。地方の中小企業の多くが同様の悩ましさを抱えていることですが、税務や会計専門職は長野市にも人材が豊富にいます。ただ、IT人材を募集してもなかなか人が集まらない。集まったとしても、常にIT関連業務が発生するわけでもないので、正社員として雇用するのは難しいということがありました。

②「内製せずに丸投げ」は現実的ではなかった

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それならと、今いる社員に研修を受けさせ学ばせるのも効率が悪い。地元のシステム開発会社に丸投げするという方法もありますが、そうすると、今後の保守もすべてお任せすることになります。業務を進めるなかで、細々と現場に合った形に作り替えなければならないことを前提にすると、「内製せず丸投げ」は現実的ではないと思いました。

案件が増えれば増えるほど現場の作業は逼迫し、業務プロセスの自動化は喫緊の課題ではあるものの、何ともしようがないという状況が続いていたのです。

JOINSの副業人材を活用した結果

ーー2020年5~7月の3カ月間、東京都在住の30代のシステムエンジニアの方と契約されました。このたった3カ月で、想定通りの成果が出たそうですね。副業人材の方と働くうえで、成果を出すコツのようなものはありますか。

現状の業務の自動化を先行

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まずは現状の業務の自動化を先行させることにしました。そのため、現在の様々な業務の作業手順を、社内で事前にとりまとめました。まとめてみたところ、自動化したい業務プロセスは全部で13ありました。いったん、それら13すべての作業手順を副業人材の方に送り、オンラインミーティングを行いました。

我々にとって優先順位が高いのはどの業務か、副業人材の方が作りやすいのはどの業務プロセスか、お互いの考えのすりあわせを行い、今回の依頼では、優先順位が高く、副業人材の方も作りやすい「印刷業務」「給与計算業務」「税務申告業務」という3つの自動化を実行していただくことにしました。

「印刷業務」「給与計算業務」「税務申告業務」の自動化を実行

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3つに厳選したのは、あれこれと手を出して並行させるより、まずはシステムを作っていただいて現場で動かしたいと考えたからです。動かしてみて、不都合があれば改善するといったことを繰り返しつつ、まずは3カ月で3つの業務の自動化を形にすることがベストだと判断しました。弊社にとっては費用対効果がしっかり測定できますし、副業人材にとっても手を動かして働き、成果を出せたと感じてもらえて、お互いやりやすいのではないかと考えました。

業務プロセスの「構造的改革」に注力する

また副業人材と議論を重ねるうち、13の業務の仕事の目的が明確になり、「そもそも、RPA化しなくてもいいのではないか」という話に発展したこともあります。RPAまで進めず、業務プロセスの「構造的改革」に注力する道が見えたのも、副業人材と一歩進めてトライしたからこそと感じています。

RPAとは?

ロボティック・プロセス・オートメーションは、ソフトウェアロボット または仮想知的労働者と呼ばれる概念に基づく、事業プロセス自動化技術の一種である。デスクトップ作業のみに絞ったものをロボティック・デスクトップ・オートメーションと呼び、RPAと区別することもある。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

社員と副業人材の「判断基準」をそろえる

リモートでのやり取りでも「不便だ」ということは出なかった。

ーー一緒に働く人との間に、東京都と長野県という距離があったことで、不便や不都合を感じたことはありませんでしたか。

コロナ感染症拡大の影響もあり、実際、長野県の本社に来ていただいたのは3回です。あとは、当社から資料を送り、必要なタイミングでオンラインミーティングをしました。

リモートでも直接、当社のサーバーにアクセスできるようIDをお渡しし、東京都と長野県という距離を感じることなく、副業人材の方が作ったシステムを導入することができたように思います。システムを走らせてから不具合が出て、電話でやりとりすることはありましたが、現場から「不便だ」といった声は出ませんでしたね。副業人材はシステム作り、社員は依頼業務の洗い出し・作業手順の提示・システムチェックをするという分業体制で進めました。

「フラットな仲間」としての関係構築を重要視

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組織として、ここ10数年の間に働き方改革を進めていたというのも、副業人材の方と社員が力を合わせて働けた背景にあるように思います。当社はヒエラルキーをなくし、「フラットな仲間」としての関係構築を重要視しています。社員全員の「判断基準」さえそろっていれば、1人1人自立し、個性を発揮して仕事をまわしていく組織こそ、持続可能な組織だと考えているからです。

社内では、課題に応じて変幻自在なチームがいくつも立ち上がっています。今回のRPAプロジェクトも同様、数名の社員によるプロジェクトチームを発足させました。チームのメンバーは「判断基準」だけ同じくした、1人1人自立した仲間です。そこに、副業人材の方もまた、「仲間」として加わったというように感じています。

「外注するよりコストが安いから副業人材にやってもらおう」という考え方では、なかなか成果はでないでしょうね。

プロセスを明確化することで優先順位を明確にする

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ーー今回、副業人材の方とたった3カ月で成果を出せた1つの理由として、事前にお願いしたいことを13の業務プロセスに落とし込み、優先順位を明確にしていたことが良かったように感じます。スタートさせてから、ああでもないこうでもないと軸がぶれると3カ月はあっという間に過ぎ去ってしまう。

自動化する業務プロセスの優先順位は、会社の課題や今後の展開、ビジョンが明確になっていなければ決められないと思います。

私たちの会社は医療福祉系事業者の経営コンサルティングを行っており、収益の柱は、「経理処理や税務申告の代行」「客先が自社で経理処理等ができるよう指導する経理自立化サポート」「経営全般の相談」の3つになります。

今後、デジタルトランスフォーメーションが進めば、主力事業の代行業務は価値がなくなってくるでしょう。代行業で稼げなくなっても何年かは、経理自立化の指導で稼げる。でも、客先がすべて自社でできるようになれば、指導業も稼げなくなるわけです。最終的に残るのは相談業。ここを前提に、RPAの優先順位を考えました。

印刷業務は早急に自動化

たとえば「印刷業務」は代行業の業務プロセスの1つです。当社の会計処理したデータなどデジタル情報を紙にプリントアウトし、顧客に手渡しするという今の時代にそぐわない非効率な作業を行っていました。ここは早急に自動化したい。

相談業務は切り口が見える場なので自動化の優先度は高くない

一方、代行業の業務プロセスの1つに、客先から提供された情報や書類を見ながら、「ここに書かれているのは何ですか」「ここに書かれていることはどういう意味でしょう」などと面談し話すことがありますが、この業務は「相談業務の入り口」、客先の経営コンサルを行ううえでの切り口が見える場でもあります。そう考えると、印刷業務ほど自動化の優先度は高くありません。

費用対効果について

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ーー費用対効果をどのように今、感じていますか?

副業人材の方に、1カ月あたり約30時間ほど働いていただき、3カ月で53万円の費用がかかりました。一方で、3つの業務プロセスを自動化することによって1カ月間で削減できる人件費の額は、その業務に当たっている社員1人当たり5時間として1万5000円程度。3年程度で回収できる金額です。費用対効果は数値的に大きくはありませんが、副業人材の方の見方や考え方が社員に浸透し、研修効果として大きかったように感じています。

今後の業務自動化プロジェクトがどのような形になるかは分かりませんが、専門的な技術の部分で外部の力が必要となったときには、また、副業人材の力を借りたいと考えています。

今回の人材採用の理由

ーー副業で働きたいと3人の方が応募されましたが、オンラインでの面談をされたのは、実際お仕事を依頼した方だけでしたね。

募集前からお願いしたいことが明確だったので、応募してくださった方々の書類に書かれた経験や実績を見て、面談前に1人に絞ることができました。契約を結んだ方は、企業の業務改善コンサルをされていて、コンサル業界の「クセ」を細かく説明しなくても理解してもらえるのではないかと感じました。

実際、共に仕事をしてみて、これまで考えもしなかった新たな視点での業務改善アプローチを提示されたことがあり、「こういうやり方もあるのか」と知ることができました。副業人材の方と働くという経験を通して、デジタル面の知識のなさを補ってもらうだけでなく、「都市部の大手企業を経験した方ならではのビジネス感覚を知ることができる」というメリットを実感しました。

投稿者プロフィール

中原美絵子
中原美絵子
フリーライター、編集者。
「週刊東洋経済」「会社四季報」等の契約記者を経て、「東洋経済オンライン」で編集をつとめる。